第55章 遊郭に巣食う鬼
「す、すごい音がしたけど大丈夫…?何して………血!鼻血かな…杏寿郎くん、手、離して!!」
杏「無理だ!!今は顔を見せたくない!!!」
部屋に入ってきたしのぶはそのやり取りを見て目を大きくさせた後くすくすと笑い、実弥も任務中からは想像出来ないような表情で笑っていた。
杏寿郎が手を退けたのはそれから十分後で、鼻血は自然と止まっていたが顔は血まみれであった。
「もう…。私の顔は隠させないくせに……。」
桜は湯に浸した手拭いを絞り、何度も杏寿郎の顔を優しく拭いていた。
杏「……すまない。夫として見せてはいけないと思った。」
「ふむ。それならいいです。きっと男のプライドってやつね…!」
桜がそう妙に目を輝かせて言うと、あっさりと許された杏寿郎は首を傾げる。
杏「それは…、むぐっ。」
桜は『口、閉じてて。』と言って丁寧に血を拭いていきながら微笑んだ。