第54章 嵐前の日常
杏「……恐ろしかった。鬼に掴まれようとしている君を見て頭に血が上り、何も見えなくなった。あと少し遅かったら……、」
「鬼舞辻のところへ連れて行かれていたかもしれません。」
杏「…………何だと。」
自身等の任務地へ戻りながら声を低くさせた杏寿郎に桜は鬼との会話を話した。
杏「俺が良い例だな。上弦の参によって鳩尾に穴を開けられた柱が未だ鬼を狩っている。目立つだろう。俺の元に不機嫌な鬼舞辻が来ないのが不思議なくらいだ。」
杏寿郎の懸念通り、伝わっていたら杏寿郎は無事では済まなかったであろうが 猗窩座は鬼舞辻に『炎柱を討った』と報告していなかった。
杏寿郎が『桜を "守る" 』と言った事が何故か無性に気になり、癪に触り、猗窩座は杏寿郎が命を落とす様子を見たくなり一度引き返したのだ。
そして気配を悟られないぎりぎりの距離から桜の治療を見てしまっていた。
しかし、それについても報告することはなかった。
そんな事は露知らず、二人は杏寿郎についても注意が必要だと認識し直し 一度止まると鬼が話したことについてお館様へ報告の文を送った。