第53章 ※不自由な夜
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杏「桜、分かった。その話はもう良いのでもっと動いてくれ。」
桜が『杏寿郎が如何に素晴らしく立派な鬼殺隊士であるか』について力説し始めてから一時間以上経つと 流石に杏寿郎も胃もたれし、更に緩い腰の動きにも耐え切れなくなっていた。
「ですが、まだ半分も話していませんよ。せめて…、」
杏「頼む!気持ちは大変有り難いが、もうこちらに集中してくれ!!」
「………………むぅ。」
桜は不服そうな声を上げつつも杏寿郎の首に腕を回すと言われた通り動きに集中し直す。
「杏寿郎くん。前後の動きで気持ちよくなれてる…?上下の方がいいんじゃ…あっちは下手でしたか…?」
そう不安そうに問われると杏寿郎は少し目を大きくさせて考える様に少し首を傾げた。
杏「このやり方でも十二分に気持ち良いぞ。少し焦れったくも感じるが、それもまた唆る。ただ君がやり難そうだったのでこちらが良いのではと提案しただけだ。どちらでも君が望む方をしてくれて構わない。」
「でしたら!上下の方を練習させて下さい…!!」
桜のやる気に燃える瞳を面白そうに見つめると杏寿郎は快諾する。