第53章 ※不自由な夜
杏「俺が運ぼう。君は枕を持ってきてくれ。」
「あ、うん。ありがとう。」
(指先も触れなかった。徹底してらっしゃる…。)
桜は枕を二つ抱えて杏寿郎の元へ寄ると膝をつき、並べながら喉をこくりと鳴らした。
(少しも…本当にすこーしも触れない気なのかな。それなら満足させるのとっても難しいんじゃ……。)
そう思いながら自身の胸を見下ろす。
(満足……か。ここは今まで触られなかった事がない。ううん、今まで胸以外にもたくさん触られてた。満足させるってどこまで触らせればいいものなの…?どうしよう……、)
杏「桜?」
呼び掛けに桜が肩を跳ねさせ顔を真っ赤にし、眉尻を下げながら潤む瞳を向けると 初々しい反応に杏寿郎は嬉しそうな顔をした。
杏「愛らしい反応だな!とりあえず布団に入ってくれ、暖かくなったとは言え浴衣姿であまり布団の外に居ては湯冷めをするぞ。」
「あ、うん…。ありがとう。」
桜は少し居心地悪そうな顔をしながらも素直に頷き杏寿郎と共に布団へ入った。
そして自ら触れることの出来ない杏寿郎の代わりに体を寄せ、自身に腕を回させる。