第53章 ※不自由な夜
杏「こちらを向いてくれ。今更恥ずかしがる事は無いだろう。あと何度入れば慣れるのだ。」
「これでもマシになった方だよ…。杏寿郎くんが真っ直ぐすぎて逃げたくなっちゃう…性格もそうだけど 特に視線が。」
杏「む。では横目で盗み見る様にすれば良いと言う事か?あまり気乗りしないな。」
「そんなところに正々堂々な精神はいらないよ…もう。」
桜はそう言いながら体に湯を掛けると手拭いで体を隠しながら湯船に近付き 少し距離を置いて浸かった。
その様子に杏寿郎は眉尻を下げて首を傾げる。
杏「君は離れている間 寂しくはなかったのか。どうしてそんなにも距離を取るんだ。」
「杏寿郎くんは恥ずかしいという気持ちを少しは理解できるようになってくださいー…。」
杏「俺だってまだまだ未熟な人間だ。恥を覚えることくらいあるぞ。鬼殺隊に入ってからも、」
「そういうのと違うの。」
そう少し怒った様な声色を出しながらも桜は思い切った様に杏寿郎へ体を寄せる。
すると杏寿郎は少し体を震わせて固まった。
喜ぶと思っていた桜は予想と反する杏寿郎の様子に首を傾げる。