第53章 ※不自由な夜
杏「一緒に風呂に入ろう!」
「……おふろ………………。」
桜があからさまに気乗りしない声色を出すと杏寿郎は眉尻を下げる。
それを見た桜は視線を外しながら気まずそうな声を出した。
「杏寿郎くんと入ること自体が嫌って訳じゃないんだよ。湯船に一緒に入るのは楽しいし……。ただ、体を洗うところを見られるのは何度しても慣れないの。単純に恥ずかしい。」
杏「だが君は汚れが何故か消えるのでそこまできちんと洗わなくても良いのではないか。もう隊服も血濡れていない。それに一緒に浸かれる分短く済むぞ。頼む。早く離れへ行きたい。」
桜はそう言われて一緒に入る事自体が目的ではない事を知ると迷った後に小さく頷いた。
(女として洗わない訳にはいかないけど、どうせ杏寿郎くんからは触れないしそんなに翻弄されないだろう……。)
(………………って、思ってたけど!!)
先に湯船に入った杏寿郎の眼力に桜は真っ赤になりながら背を向けて体を清めていた。
その赤い項を見てポニーテールに結った杏寿郎は笑みを浮かべながら浴槽の縁に頬杖をつく。