第52章 受け止め方
千(父上は命を落とした隊士は酷いお腹の傷を負った隊士だったと仰っていた。また…残酷な光景を思い出してしまったんじゃ……。)
「千寿郎くん。」
桜は千寿郎の頬を両手で優しく包むと困った様に微笑みながら少し首を傾げた。
「ちゃんと見て。お姉ちゃん大丈夫です。」
千寿郎はそう言われて漸く桜の微笑みが浮かぶ顔をきちんと見つめた。
そして目を大きくさせた後フッと肩の力を抜く。
杏「心配し過ぎではないか。」
「以前…ここに来たばかりの時に千寿郎くんに情けない姿を見せたことがあるんです。きっとそのせいで……。」
杏「……そうか。」
「でももう大丈夫。千寿郎くんが泣かせてくれて杏寿郎さんが立たせてくれた。みのるも見てる。」
千「あ…………すみません。前にも…もう平気だと聞いたのに……。」
そう言われると桜は千寿郎を抱き寄せて頭を優しく撫でた。
「うん、でも優しい気持ちはとっても嬉しいよ。ありがとう。」
桜は再び千寿郎に微笑みかけると千寿郎の背を押して屋敷へ入り、槇寿郎の元へ急いだ。