第52章 受け止め方
杏「その様な事を頼むとは…やはり時透の見廻りに付いて行っていたのだな。だがここは宿屋ではない。待っていた方が安全だぞ。見廻りではいつ鬼と遭遇するか分からないんだ。君を鬼の目に晒す訳にはいかない。」
「…………はい…分かりました…。」
(ちょっと…気が大きくなってたのかも……。本当に必要とされる時まで慎重に行動して生き残らないと。鬼舞辻が私を殺すのなんてきっとものすごーく簡単なんだから…。)
桜がよく反省しているのを空気から感じ取ると杏寿郎は小さく笑みを浮かべながら腕組みした手に血管を浮かばせる。
杏(一体俺は一日に何度桜に触れていたのだろうか。これを一ヶ月…。それに昨夜の桜についても気に掛かる点がある。まさかとは思うが……、)
杏寿郎は反省から眉尻を下げている桜を見下ろしながらギリギリと自身の腕を掴む手に力を込めた。
―――
「行ってらっしゃい!杏寿郎さんも皆も気を付けてくださいね…!」
杏「うむ!桜も蝶屋敷から連絡があっても胡蝶が迎えに来るまでは此処で待機するんだぞ!!」
桜がそれにはっきりと返事をすると杏寿郎は微笑み、拳をぎゅっと握って何かを耐えるようにしてから千寿郎と桜に背を向け 継子組と共に門へ向かった。
そして表へ出ると笑みを消し、行く先を見据えながら小さく低い声を出す。
杏「桜からは触れてくれないのだな。」
風が強いその日、その言葉を聞き取ることが出来たのは善逸だけであった。