第9章 鍛錬
「!!」
杏寿郎の纏う空気が変わったのを感じて桜はビクッと体を震わせる。
見ると杏寿郎の目はまるでそこに斬るべき者が見えてるかのように鋭い。
杏「炎の呼吸、壱ノ型――…不知火!!」
―――ダンッ
「……………え…?」
杏寿郎の強い踏み込みの後、かろうじて見えたのは炎のようなものが横一直線に走り抜けた様子のみだった。
気が付けば杏寿郎はその炎が走り抜けたところに居て、今は勢いを殺すようにザザーッと足を滑らせている。
チンッと刀を仕舞う音で桜は我に返った。
「…す、すごい………すごいです杏寿郎さん!!!」
杏「そうか!!」
杏寿郎は桜に大きな目を向けて笑う。
先程まで纏っていた空気は跡形もなく消えていた。
杏「このように呼吸は刀による技へと続いている。これを使うのが鬼殺隊だ。これから嫌というほど見ることになるぞ。慣れておくといい。」
そう言いながら杏寿郎はまた縁側へ刀を置くと、バッと桜へ向き直り大股で歩み寄った。
杏「だが!君はその手で刀を持てないからな!!教えるのは型の手前までになるが、身体能力の強化は出来る!頑張ろう!!」
「…っ!…はい!!!!」
桜の返事を聞くと杏寿郎は柔らかく笑って頭を撫でた。