第8章 覚悟と条件
千「でも…、そんなに桜さんを大事に思うユキさんが、何故 過酷な願いを托したのでしょう…。」
「考えてみたら確かにユキらしくないなあ…。」
また二人でうーーんと首を傾げる。
「お話しできたら良いんだけどね…。」
そうぽつりと落ち込んだ声で言うと、千寿郎は困った顔をした。
千「さっき唐突な別れをしたと仰っていましたが、願いを託すと言われたのはいつですか…?願いを託すという言葉は別れをも連想させそうだと思うのですが…。」
「あれ…?たしか、に………」
桜は言葉を詰まらせると、困惑の色を浮かべながらどんどん目を大きく見開いていった。
「………………ちょ、ちょっと待って…私、一度もユキにそんな事言われてない………。」
桜は口に手を当て、底しれぬ恐怖を感じて眉尻を下げた。
千「えっ!?」
「この時代に尊い人が血を流した事も、ユキが救えなくて辛い思いした事さえも…、わたしは聞いてない………。」
「でもそれは記憶を消すほどのことじゃないよ…。もしかして元々聞いてないとかかな…。」
千「………まさか…この使命を与えたのは全く別の存在だったり、して…。」
そう言うと二人は目を合わせて喉をこくりと鳴らした。
「そ、その可能性もあるかも…。ううん、とてもユキだとは思えない。何が起こっているんだろ…ちょっと怖いなあ…。」
桜はそう不安そうな顔をしたが、すぐに顔を上げて言った。