第1章 異変
「セイラ、お母さんみたいだねぇ」
「馬鹿言わないでください」
ハンジさんが呟き、私が言葉を返す。
ぐらりと傾く体は重いが、それでも腕を回しその体を支えてやる。
触れ合う温もりと、首筋をかすめる呼気と、穏やかな誰よりも幸せそうな表情はどこか幼く見え、周囲もそろそろお邪魔だねと腰を上げようとしていた。
リヴァイさんの部屋で無礼講のように酒を空けていた面子が、一人、また一人と自室へ戻っていく。
そんな中最後まで残ったのは私とハンジさんだった。
「片付け手伝ってあげようか?」
「それなら兵長を抱えておいてください」
「ベッドに転がす?」
「ジャケットも脱がしてません」
せめてベッドに入るときは、寝心地の良いようにしてあげたい。
そんな思いを伝える私にハンジさんは、じゃぁ脱がしちゃおっかなーとあえて明るい声を出した。
「そうすればいいでしょう・・・・・・いや、ダメです。それはちょっとやめてください」
咄嗟に慌てて返事をした私をハンジさんがきょとんと見る。
しかしその直後その瞳に光が宿り、ジャケットを脱がしにかかっていった。
・・・その行動力の速さは、流石だな・・・
「何見ても知りませんよ・・・」
「興味深いね」
グラスやら空になった瓶をかき集め始めた私と、リヴァイさんの服を脱がそうとするハンジさん。
その指先が止まるのにそう時間を要することはない。
口で言っても聞かないことは分かっている。
それなら自分の目で確かめろ!!