第5章 呼んで、動いて、見せてよ
「最近は、どう?」
「・・・・・・」
ふとそこにハンジさんの姿が見えた。
そしてリヴァイさんが笑ったと思ったのだが、私の空想だったのだと気付く。
「・・・・・・」
「前より、酷いですね・・・」
「・・・」
「とぎれとぎれ休むというよりも、最近は・・・眠ったら起きない。その代わり眠るまでの時間は・・・前よりも多い気がする」
まるで身辺を整理しろと本能が告げているかのように。
気づいていたことを音にすることは恐ろしく、だが今聞いてもらわねば自分の中に渦巻かせているだけになってしまうとハンジさんを見た。
ハンジさんは今にも泣きそうな顔をしていた。
なんて顔ですか。
そう告げそうになり、私も自身の頬に触れる。
笑顔が固まってしまったような気がした。
「・・・・・・そう・・・そうか」
「・・・・・・」
「リヴァイと過ごせる時間があるなら、それでいいじゃないか」
「ええ、そうですね。だから・・・出来る限り私は・・・」
「でもちゃんと食べなきゃダメだよ。ちゃんと食べて、飲んで、眠って・・・」
「・・・ええそうです。でもハンジさん。私が寝ている間にも、リヴァイさんが」
「だから」
カップに注ぎティーポットを置く。
甘いパウンドケーキの香りと、上に乗ったナッツを見てぎゅっと心臓を握られた気がした。
「・・・だから、セイラだって自分の体を」
「・・・こんなことで、壊れたりしませんよ・・・」
「・・・・・・」
「・・・でもね、ハンジさん・・・」
心臓をトンと叩く。
そしてその握り拳を見つめ、ふうと吐息を零した。
「ここが壊れてしまいそうなんです」