第5章 呼んで、動いて、見せてよ
「少し出かけますよ。早く起きてくださいね」
魔法のような言葉を落とす。
少しでもリヴァイさんの耳に残ればいい。
そう願いながらもう一度唇を寄せ、キッチンへ出向いた。
「うわー酷い顔だね」
そうかもしれませんね。
曖昧に笑いながらカップを出した。
そして茶葉の入った缶を手にする。
「・・・眠り初めてから何時間?」
「・・・もうすぐ丸二日です」
「そう」
眠りの時が長くなることの意味することなど考えるも容易い。
ハンジさんはそれ以上何も言わず、私は手持無沙汰のまま湯が沸くのを待った。
沈黙は辛い。
だがこの沈黙にも慣れた。
リヴァイさんはいつ目覚めてもおかしくはない。
そして永遠に目覚めなくてもおかしくはない。
そんな状況だからこそ、私は・・・
「セイラ」
「はい?」
「お湯、沸いてる」
「あ、本当だ」
ティーポットへ湯を注ぎ、時間を掛けて蒸らしていく。
ミルクティーが野みたい気分だったためにアッサムを少し濃く淹れようとした私は、ハンジさんがいつもリヴァイさんの座る場所に座っているのを見て目を細めた。
白のクラバット、兵団のジャケット。緑のマント。
黒い瞳と黒色の髪と、低いけど優しい声音。
リヴァイさん・・・・・・。