第5章 呼んで、動いて、見せてよ
「セイラ」
「・・・ハンジさん」
「勝手に入ったよ」
「・・・はい」
雪を払い落として入ってくださいよ。
そう告げるまもなくハンジさんは室内で雪を落としている。
最悪だ。
だがそんなことどうでもよかった。
幸せそうに微笑みながら眠るリヴァイさんの次の目覚めはいつだろうかと、私は自分の椅子をベッドの傍に運び、そこでゆっくりと時間を過ごしている。
持っていた本は粗方読みつくした。
リヴァイさんが持っていた小難しい本まで読んでしまうほどに。
それから私は一冊のノートを手にした。
今までの経緯や様々なことが書き込んであるそれへ、更にペンを重ねた。
時間は驚くほどある。
そしてその時間を無駄にしたくはない。
「セイラ。あなたもちゃんと食べないと」
キッチンを見て何事かを悟ったらしいハンジさんが告げてきた。
私は、そういえば食事を最後に取ったのはいつだったかと考え、それが昨日の昼だったと思い出す。
「食糧、持ってきたから。リヴァイさんが好きな紅茶も・・・ほら」
「ありがとうございます」
「・・・セイラ・・・とりあえず」
甘いものでも食べようよ。
ハンジさんは勝手に湯を沸かそうとしている。
そうですねと立ち上がり、私の足腰まで固まりそうになっていることに気付いた。
ぐっと大きく伸びをし、それからベッドに片足を掛けリヴァイさんの顔を覗き込む。
手の甲で頬を撫で、それからそっとキスをした。