第5章 呼んで、動いて、見せてよ
「おい、セイラ。見てみろ」
「・・・寒い中、何やっているんですか」
思わず笑った私は、リヴァイさんの手の中の物を見た。
白い二つの不格好な玉が重なっている。
適当に周辺に落ちていた枝で顔を作ったらしく、どうにも不細工だ。
「セイラだ」
「ちょっと・・・」
「・・・我ながらなかなか・・・」
「芸術のセンスすらないんですか!!」
それなら私が!と私もジャケットを羽織り外へ出る。
マフラーを忘れたリヴァイさんの首へ巻きつけ、私も雪だるまを作り上げた。
悔しいがリヴァイさんは私より大きいので、三つの玉をくっつけて。
眉毛の代わりを探し、鼻の代わりを探す。
まだ柔らかく降る雪の中で、互いに出来上がった雪だるまを見せ合い、大切そうに玄関先に置いた。
寒さにかじかむ指に息を吹きかけた時、リヴァイさんは銀色の世界で、美しい黒の髪を濡らしながらこちらを見て笑っている。
ああ・・・何故だろう。
・・・あなたがどこかへ消えてしまいそうだ。
襲ったのはどうしようもない不安だった。
それをかなぐり捨てるようにリヴァイさんの下へ駆け寄り、ぎゅっと抱きつく。
慌てたリヴァイさんが私を抱き留め、しかし衝撃に耐えきれずにそのまま二人で雪の中へ倒れ込んでしまった。
ふわりと雪が舞う。
音のないしんとした世界に私とリヴァイさんの二人の息遣いだけが響いた。
抱き締められた腕は解かれることなく、二人で見上げた空から雪は降り注ぐ。
何もかもを覆い尽くすように。
ああ・・・出来ることならこのまま私たちを埋めて、そして何の不安もない世界へ連れて行って・・・・・・。