第5章 呼んで、動いて、見せてよ
「・・・スープしかありませんよ」
「十分だ」
「・・・そうですか」
お風呂に入り、すっきりとしてきたリヴァイさんのために鍋をかきまわす。
一度味見をした私は、塩が足りないと塩の瓶を抱え、ほんのひとつまみぱらりと入れた。
塩の結晶がスープに吸い込まれていき、もう一度味見をしながら頷く。
うまくできただろうか。
固すぎるパンではかわいそうだが仕方がない。
水とスープ、それからパン。
一日ぶりに食べる食事ならばちょうどいいのかもしれない。
「待たせてすみません」
そっと定位置である椅子に腰をかけたリヴァイさんの前へ、ことりとスープを注いだお皿を置く。
スプーンなどのカトラリーは自分で用意していたらしく、私は嬉しそうに「いただきます」という彼の前へ腰を下ろした。
ただ、眠る時間が長くなっただけだ。
他は何も変わらない。
人よりも多く眠り、そして目覚める。
当然のようにお腹は減り、喉は乾いているのだろう。
・・・この眠りが・・・数日に渡ってしまったらどうなるのだろうか。
私の見た手記には最後の息を引き取る瞬間まで綿密に書かれ、そして涙の乾いた後が見えた気さえした。