第5章 呼んで、動いて、見せてよ
「何時間だ?」
「・・・18時間です」
「そうか・・・その間クソもしないで済むとは・・・人間の体の構造は面白いな・・・」
言葉とは裏腹に、回された腕に込められた力は強い。
リヴァイさんの着ている寝巻に私の涙が吸い取られていき、そっと髪を撫でられながら私は体の力を抜く。
堪えていた思いを吐露しそうになった。
だがそれを必死に腹の奥底へ押し込め、蓋をする。
けっして出すわけにはいかないと繰り返しながら。
だがその蓋さえもリヴァイさんは容易く取り払おうとした。
「・・・涙よりキスのほうがいいな」
「・・・馬鹿」
「・・・でもお前の涙なら・・・・・・」
必死に顔を肩口へ埋める私に、リヴァイさんが触れる。
くすぐるような動きと、柔らかい甘い誘いは私の凍えそうになっていたお腹の奥を温めていく。
ただこうして同じベッドで横になっていたかった。
時々キスをし、時々確かめ合うように鼻先をぶつけながら。
一人じゃ感じられない・・・あたたかさが、ある。
柔らかく髪を撫でてくれる手、時折落ちてくる唇、絡みつくように私の体を挟む足。
くったりと力ない腕を私の体に、巻き付けるようにして眠る夜が増えた。
今はその歯痒ささえない。
「・・・・・・スープを食べたい」
「え・・・」
唐突に告げられた言葉に、私は目を開く。
それはリヴァイさんが深い眠りに落ちていた時に、私が伝えていた言葉だ。
そして気付くことになる。
ああそうか・・・意識は私と共にあるんだ、と。