第5章 呼んで、動いて、見せてよ
「・・・・・・」
そっとキスをする。
一度押し付け、今度はもう少し強く。
リヴァイさんの呼気を吸い上げ、その首筋に指先を辿らせながら。
『おはよう』
そう言って目覚めてくれることを信じ、その希望を捨て切れぬまま私はキスをする。
瞼へ。頬へ、鼻先へ、口端へ。そして唇へ。
「・・・・・・リヴァイさん・・・・・・リヴァイさんッ・・・」
つうと頸を涙が滑り落ちた。
それは初めて零したものだったのかもしれない。
涙など零している場合じゃないと必死に堪えていたものだ。
リヴァイさんが不安にならないよう、リヴァイさんが悲しげにその表情を曇らせないように。
安心して眠れるよう、・・・そして目覚められるよう・・・。
寝てしまって
そう何度も口にした。
寝たら起こしてあげる。
そう強い瞳を見せた。
だがもうその言葉さえ言えないような気がする。
次にリヴァイさんが目覚めた時に、「寝ないで」と告げてしまいそうな弱い自分が居た。
「・・・・・・リヴァイさん」
ぽたぽたと零れる涙がリヴァイさんの頬を濡らす。
長い睫毛も、その鼻筋も私の涙に濡れていく。
落ちた涙を舐めとるように舌を這わせ、もう一度唇へキスをした私は、直後、回された腕にびくりと体を強ばらせていた。
「・・・・・・セイラ・・・おはよう」
「え・・・あ、はい」
「どうした?」
「なんでもありませんよ」
咄嗟に顔を覗き込もうとするリヴァイさんの首筋に齧りつくように腕を回す。
ああ・・・また帰ってきてくれたんだ。
私のところへー。