第1章 異変
笑いはどちらともなく自然と零れ、誘い合うように唇を重ねる。
触れ合わせるだけじゃ足りないと、その先を求める自分がいることも分かっている。
リヴァイさんの匂いに包み込まれたままキスをすれば、私は全てをなげうちたくなってしまうのだから。
さりげなく仕掛けられる甘い触れ合いは、ぐずぐずと脳髄を蕩けさせていく。
だがその波に乗っていいはずもなく、すっとウエストから尻にかけて触れてきた私より少し大きな手を私は打ち払った。
「おい・・・」
「とりあえず仕事です。寝ないでくださいよ。あと、触らないでください」
「それじゃこれが終わったら、な」
「な、てなんですか・・・そんなものは」
夜に・・・と言いかけ、はっと自らリヴァイさんの罠に嵌まっていこうとしていたことに気付く。
ここ数日繰り返し仕掛けられる腕から逃れ、見事生還したためしはなく、毎度リヴァイさんの腕の中で喘いでいる。
そうされることを望む私がいるからこそ行われる行為ではあるが、それでもものには限度が・・・・・・
「・・・セイラ?」
「・・・・・・」
「そんなものは・・・なんだ?」
口元を上げるリヴァイさんは、いやらしさの塊だ。
皆の注目を集める兵士長のこの腑抜けた顔を周囲のものが見たらどう思うのだろう。
そんなことを考えながら私はちらりと机上へ視線を投げ、残された書類仕事の山を確認した上でリヴァイさんの頬に拳を当てた。