第1章 異変
リヴァイさんの眠る時間は、気づけば目覚めている時間を凌駕するようになっていた。
異変に気付いたのは、他でもない私だった。
事務作業をしている際、ふわりと意識を飛ばす事が多くなったリヴァイさんに「起きてください」と声を掛ける事が多くなった。
何かがおかしいと思い立ちはしたが、その時に明確なものはなにもない。
「リヴァイさん」
「あ、ああ・・・すまない。寝ていたな」
羽根ペンを持つ指先がびくりと震え、それに伴い白い羽根がふわりと揺れる。
インクの染みを作ってしまった書類に目を落とし、はぁとリヴァイさんは溜息を零した。
「疲れているんじゃないですか?」
「まぁ、そうだな」
「だったら、夜は手加減して下さいよ・・・」
ぶつくさ文句を言う私に、リヴァイさんは少し微笑むだけだった。
昨夜もとことん責め立てられ、私は泥水に浸かるような眠りに落ちた。
この肌に触れていたリヴァイさんは、そんな時間を共有した疲れを引きずりながら仕事をしている。
私のほうが負担は大きいだろうか。
そんなことを思いながらもリヴァイさんの傍まで近づき、そっと腕に触れる。
心配なことに変わりはなく、その思いのままに触れるとこちらを見上げるリヴァイさんは柔らかい笑みを浮かべ、深みのある声音で告げてきた。
「お前が煽るからな」
「あなたが底なしだからですよ」
「ほめ言葉として貰おう」