第4章 壊したい時間、過ごしたい時間 ※
「ありがとな」
柔らかくリヴァイさんの声が落とされる。
その声にはっと顔を上げた私は、彼の触れるだけのキスを受け止め、やがてさくさくと落ち葉を踏みながら歩き始めていた。
大きな木々がある。
緑の深い色と、その間を彩る赤や黄色、橙や紫。
鮮やかな色とその色合いこそが豊潤な秋とその先にある冬を匂わせていた。
風がひんやりと冷たく感じる。
こうして季節を直に感じ、ゆっくりと過ごすことが出来る自分たちは幸せものなのだろうか。
「っ・・・」
唐突に腕を引かれ、慌てて足を止めた私は、その赤い実を見つけた。
先日ハンジさんと来た時には気づかなかったものを見つけながら、のんびりと木漏れ日を浴びながら歩いていく。
時折こちらを見にくるリスや、大きく羽を広げる鳥の羽音を聞きながらゆっくりゆっくり今という時を感じていた。
ああそうだ。
こうして・・・・・・こうして・・・・・・。
「セイラ」
ぐっと抱き寄せられ、驚いた私の手から籠が地面へ落ちた。
鈍い音と共に転がり、せっかく拾い集めたものが飛ぶのが見えた。
慌てて拾おうとするも、リヴァイさんの腕は私を離さず、そしてきつく抱き締める腕に泣きそうになってしまう。
私だけじゃない。分かっている。
不安なのは、本人が一番だろう。