第4章 壊したい時間、過ごしたい時間 ※
いつ目覚めてもらってもいいようにテーブルにはパンと蒸かした芋、トマトベースのソースを置き、布を掛けた。
食材の貯蔵庫を確認しながら必要なものを書き出していく。
卵と・・・少しの肉、野菜も必要だ。
「小麦も必要だなぁ・・・」
ピッチャーに水を注ぎ、ピカピカに磨いたグラスを置いた。
食材を入れるための籠にはチェックの柔らかい布をかけてある。
財布と、家の鍵・・・それから・・・。
「リヴァイさんに手紙を残そう・・・」
決して質の良くはない紙を引き寄せ、いつもリヴァイさんが使っている羽ペンを持つ。
几帳面そうな文字だ。
そう言ったリヴァイさんの声をふと思い出した。
私の右肩上がりの文字に苦笑していたリヴァイさんのサインはいつだって豪快でもあり、緻密だった。
買い物に行く旨を伝え、出来れば目覚めていてほしいと願いを託す。
食事は簡単に食べてと伝え、出来れば次の食事は共にとろうと祈る。
リヴァイさんまだ・・・見てないものがたくさんあるでしょう?
私たちの重ねていく時間は、私一人で重ねる時間よりも少なくなってしまうものですか?
整えられた室内を見廻し、私は寝室へジャケットを取りに戻った。
リヴァイさんの寝息は未だ穏やかだ。
そんな彼の唇へキスを一つ落とし、いとおしげに額から頬へ撫で下ろした。