第3章 憎くて、愛おしい
「リヴァイさん、寝てしまうのですか?」
少し肌寒くなってきたと思う。
リヴァイさんの眠る時間は緩やかに右肩上がりのグラフを描いている。
その波もいつ来るのかが分からず、不安だけが私の心を締め付けていく。
それを悟られないように、震えそうになる指先を堪え、椅子に深く腰を下ろしたままうとうとと意識を飛ばそうとするリヴァイさんの肩へ触れた。
逞しい肩だ。
現役時代よりは勿論その筋肉は落ちてはいるが、それでも・・・・・・。
「リヴァイさん・・・寝るならベッドへ行ってください」
「・・・・・・セイラ・・・」
黒い瞳がとろんと彼の眠りたいという欲求を表してくれているのが分かる。
そうか、そんなに強く訴える程に強く求めたいものなのか。
幼子が必死に眠りに落ちないように堪えようとする仕草に似ている。
目下を大きな手で擦り、生あくびを堪えようとしていた。
ああそうだな。眠りたいよね。
私はリヴァイさんの腕を取り、少し強く引く。
本格的に眠ってしまったらここからベッドへリヴァイさんを、どこかへぶつけたりせずに運べるかどうかすら不安だからだ。
・・・リヴァイさん・・・・・・。
太い腕を私の肩へ回し、ぐっと彼の体を引き起こす。
シャツにカーディガンという彼の格好も、本来であれば寝巻に着替えさせてあげたいが、それも出来る時間はなさそうだな。