第2章 捜査開始
言葉を続けることはない私に、ハンジさんは悲しげに瞳を伏せ、少しの間をおいた。
その意図するところを感じることなど簡単なことなど分かっている。
だがどうしようもない現実を人は突きつけられたときどうするのだろうか。
絶望にうちひしがれ、泣き叫ぶのか。
真実だと認めずかりそめを生きるのか。
現実を受け止め、今すべきことを直視していくのか。
「正直なところ、これっていう決め手はない。症例も少なければ、医者にかかっている人間も少ない。
今リヴァイがおかれている状況から推測するしかできないんだよね」
私も医者じゃないし。
分かっている。
そんなことは百も承知だ。
だがそれでも、なにかにすがるように現実の打破を求めるのも、人間の性じゃないだろうか。
「リヴァイに起こっていることは、間違いなく現実だ。彼は眠りに溺れている。溺れ、そして愛されている」
「間違いないですね」
「人がそれに逆らえるとも分からない。ならばどうする?」
このままではいけないことは分かっている。
もし、このまま眠る時間が増え続ければ、周囲をだまし続けることは不可能になるだろう。
都合の良いと言えばいいのかは分からないが、人類は巨人から自由を得るために勝利を導いた。
その導き手の一つがリヴァイさんであったことに代わりなく、そんな私たちに残されたのは未開の土地の調査だ。
今も何人もの人間が外へ出ている。
だが未知の世界であることに代わりはなく、そこにまったくの危険がないとも言い切ることはできない。
もっぱら事務作業が多くなり、以前の日々増える死者たちの名簿とは全く違う、未来を見据えた書類がリヴァイさんの机に積み上げられるようになった。