第2章 捜査開始
「セイラ!セイラ!」
バタバタとノックもなしに部屋に入り込んできたハンジさんは、私の傍まで近付き、分厚い本や紙の束を持ってくる。
「ちょっと時間ある?」
そう問い掛けてきた。
それは私に勿論拒否権などあるわけもなく、勿論私と共に時間を過ごすよね!と確信めいた瞳を見せながら、だが。
「紅茶でいいですか?」
「あーおかまいなくね。アールグレイね」
まったくもっておかまいなくではない。
それでもそんな彼女のためにティーポットを準備し茶葉を入れた私は、熱い湯をもらいに部屋から出る。
どくん・・・・・・と心臓が鳴った。
何を言われるのかと怯えている自分が居ることに気付く。
そう、私は怯えているんだ。
何かが明らかになることに。
明瞭になった上でその先にあるものが希望か絶望かさえ分からないまま。
「大丈夫、大丈夫・・・・・・」
何度も繰り返してきた言葉を、今自分へ向ける。
そう大丈夫。だから・・・・・・
薄暗い廊下をゆっくりと歩いて行く。
両手で包み込むようにして持っているティーポットは、リヴァイさんと町へ行ったときに中古品だが安価で手に入れたものだった。
そっと拳で滑らかな側面を撫で、少し注ぎ口の欠けたポットをいとおしげに見詰める。
割れていることなど造作もない。
淡いベージュの素朴な陶磁器は、番いのティーカップもあったのだが、それはいらないと断った。
とりあえず紅茶が淹れられればいい、リヴァイさんが自分と共に過ごす時間を優しい気持ちであれるように。
カツカツとブーツの踵が床を叩く。
硬質な音とは裏腹にその歩みは柔らかく聞こえるかもしれない。
リヴァイさんとの思い出の品を大切に抱える自分はなんと少女じみた思いを持っているのかと思わず笑い出してしまった。
もう、30歳近くなのにー。