第1章 異変
そう思いながらグラスをトレイへ乗せた時だ。
ハンジさんが立ち上がり、私をまっすぐに見詰めてきた。
私もそんな彼女を見つめ、手の動きを止める。
「ねぇセイラ、君だって気づいているはずだろう?」
「・・・なに・・・をですか?」
「ここ最近、リヴァイの様子がおかしいってことだよ」
視線を一瞬投げ、すぐに私を戻す。
誘われるまま私もそちらへ視線を向け、気持ちよさそうに熱い胸板を上下させている男を見た。
今は彼の寝息が唯一のバックミュージックだ。
ああ・・・毛布でもかけてあげたらよかったな。
「セイラ・・・?」
思い立ったままふらりとベッドへ向かい、重い体の下の掛け布団を出す。
床に向かってベッドから落ちそうになっている腕を整え、そのままこの胸に抱きすくめられたい感覚をしりつつも見て見ぬ振りをしていた私は、そんな彼に毛布を掛け、頬を撫でた。
この指の動きに含まれるものは、彼を思う心だ。
手の甲で頬へ触れ、そっと撫で上げる。
体を休息を求めるのならば、それに従えばいい。
そんな思いのまま幾度も撫でていると、ハンジさんが気づけば傍までやってきていた。
そして私とリヴァイさんを見つつ、薄い唇を動かした。
「ねぇ、リヴァイのこの異変・・・いつから?」