第4章 ポッキーゲーム
~ラギーver~
ただいまラギーの部屋にて、ポッキーの袋を突き付けて頼み倒している私です。対するラギーはこれでもかというほど顔を歪めて、隠すこともなく明らかに引いている。
「ポッキーゲーム…」
「オレ…普通にポッキー食べたいんスけど…」
「そんなこと言わずに。」
「しつこいっスよ。」
約10分ほど説得しようと試みていたが、相手は交渉に対して右に出るものはいないといっても過言ではないラギーである。これ以上はお互い進展も譲ることもないことを感じた私は渋々引き下がることにした。
「………分かりました…」
「………あー、もう!!分かった分かった、一回だけっスよ。」
「ありがとうございます!!!」
しょぼん、と効果音がつきそうなほど落ち込んで見せれば、ラギーは簡単に折れてくれた。可愛い後輩に対してはとても優しいと知っているからこその行動だが、ちょっと汚かっただろうか。
「んっ!!」
「はいはい…」
ポッキーをくわえてラギーに向けると、とても面倒臭そうに反対側をくわえてくれる。軽快な音を鳴らし、両者スピードを落とさずに食べ続ければあっという間に距離が近くなる。ラギーが離してくれるだろうと踏んでいた私は、段々縮まる距離に焦ってくる。その時、ボキッ、と大きな音を響かせてラギーがポッキーを折った。獣らしい大きく口を開けたもので、肉食っぽい鋭い歯が目の前に見えて固まってしまった。
「うまかった~!!ごちそーさまっス。」
「……あ、ラギー先輩の負け…」
「そーっスね!!オレの負けっス。でもポッキー食べれたんで、満足っス!」
折られた後の残ったポッキーをポリポリ食べながらそういう。しまったなー、負けた方が何か罰ゲームをするとか決めとけばよかった。恋する乙女だもの、少し残念に思ってしまうのも仕方がない。
「…何残念そうにしてるんスか。思ってることなんかバレバレっスよ~。ポッキーなんて口実作らなくても、なつきちゃんならおねだりできるっスよね。」
顔を一気に詰められ、おでこ同士を合わせた後そのまま部屋から出て行ってしまう。私は顔を赤くさせ呆けることしかできなかった。