第2章 柱合会議
「突然、屋敷と給料を求めたのは、彼女が理由だね?」
「⋯⋯俺は構わないのですが、あの娘は、他の継子と同じ待遇を受ける資格があります。身の回りの世話をする者はいませんが、料理も掃除も全てこなせるので、問題ありません」
「それじゃあ、料理も掃除も、宇那手さんにやらせているんですか? 冨岡さんがお世話をされている様な物ですね〜」
何が癪だったのか、胡蝶は追い詰める様に笑った。とうとう伊黒と実弥まで肩を震わせ出した。
炭次郎とは対照的に、宇那手の存在は、柱全員に好意的に受け止められたのだ。
「勿体ない、勿体ない。うちの屋敷でお預かり出来れば、食事の準備や掃除は必要ないですし、怪我をしても何時でも診られます。女の子用の可愛い着物もありますよ? 冨岡さん、毒について学ばせたいのであれば、私に預けていただけませんか? もしくは、奥様のいる宇髄さんか、ご家族のいる煉獄さんの方が、女の子の扱いには適していると思うのですが?」
胡蝶が冨岡を常日頃から嫌っているのかは、分からなかったが、彼女は宇那手にある種の執着を見せた。
「俺は屋敷も、余剰な金も持たぬと伝えたが、あの娘は何故か俺の側を離れなかった。放っておけば、山の中であろうと、野宿を始めた。故に、継子にした」
冨岡は極めて散文的に答えた。胡蝶は、笑みを絶やさず、石頭の冨岡にも理解出来る言葉を探した。
「あの子は、鬼を殺すために、普通の生活を捨てたんですよ、冨岡さん。家族を喪うことは、辛く悲しい。私や冨岡さんとは、事情が違います。鬼に家族を殺されたのではなく、自分の手で、家族を殺したんです。⋯⋯あまり、時間は無いかと思いますが、鬼と接していない間は、出来る限り幸せに過ごして欲しいと思いませんか?」
「幸せ⋯⋯」
冨岡は、初めて宇那手に会った日のことを思い出した。父親を斬り殺した後、恨み言でも吐かれるかと思ったが、彼女は泣きながら笑ってみせた。
今夜、此処へ来たのが、水柱の方で良かった、と。家族を殺した末に、ありがとうと言われたのは、初めての経験だった。
「そのことについては、冨岡と火憐で良く話合う様に。話を進めても良いかな?」
産屋敷の言葉に、もう誰も宇那手について言及出来なくなった。