第80章 不死川玄弥
「ということが昨日あってさ、刀の研磨が終わるまで、三日三晩かかるらしくて、研ぎ終わるのが明後日になるんだ」
修行を終えたという炭治郎は、何故か宇那手と玄弥が話し込んでいた部屋に上がり込み、おかきを食べ出した。
炭治郎の刀に対する思いを聞いた鋼鐵塚は、訓練用の絡繰人形の中に隠されていた、戦国時代の刀を研磨してくれる事になったらしい。
「その研ぎ方がすごい過酷みたいで、死んじゃった人もいるとか言ってて、心配だよ。絶対覗きに来るなって言われてるんだけどさ、見に行っても良いかな?」
ここで、遂に玄弥の堪忍袋の緒が切れた。
「知るかよ!! 出てけお前!! 友達みたいな顔して喋ってんじゃねーよ!!」
「えっ、俺たち友達じゃないの?」
「違うに決まってんだろうが!! てめぇは俺の腕を折ってんだからな! 忘れたとは言わせねえ!」
「あれは女の子を殴った玄弥が悪いし、仕方ないよ」
「下の名前で呼ぶんじゃねぇ!!」
「このお煎餅美味しいよ。食べる?」
話が噛み合っていない。宇那手は頭を抱え、玄弥は煎餅を叩き割った。
「クソが!! いらねーっての!! 消えろ!!」
「あれ⋯⋯? 歯が抜けてなかったっけ。前歯⋯⋯温泉で⋯⋯」
「⋯⋯お前の見間違いだろう」
自身の体質について明かすつもりが無いのか、玄弥は視線を逸らして答えた。
すると、炭治郎は予想外の行動に出た。
「見間違いじゃないよ。歯取ってあるから」
「えぇ?!」
流石に宇那手も引いた。玄弥も顔を引き攣らせて距離を取った。
「何でとってんだよ、気持ち悪りィ奴だなテメェは!!」
「いや、だって落とし物だし、返そうと」
「正気じゃねぇだろ、捨てろや!! 出てけ!!」
こうして炭治郎は部屋の外に放り出された。玄弥は宇那手に詰め寄った。
「無理でしょ、あれ!! あれと仲良くしろって言うんですか?!」
「いや⋯⋯うん⋯⋯まあ、人には色んな側面がありますから⋯⋯。でも⋯⋯あれは無いですね」
宇那手も肩を落とした。どこの世界に、人の歯を取っておく人間がいるというのだ。
「⋯⋯竈門君の件については、もう何も言わない事にします。それより、銃の訓練は上手く行っていますか?」
「命中率は上がったと思います」