第79章 晩餐
「私は大切にされていますよ。柱の皆さんや、継子たちに。甘露寺さんにお話を聞いてみます」
宇那手は、もう一度時透の頭を撫で回した。瞬間、鴉の銀子に手の甲を思い切り突かれた。
夜になると、隠に担がれて甘露寺がやって来た。
「火憐ちゃーん!! おかえり!! 待ってたのよ!!」
「ご心配おかけ──」
「キャーッ!! 指輪!! 指輪をしているわ!! ついに結婚したの?! 冨岡さん?! 冨岡さんの方から告白されたの?!」
「はい。夫婦になろうと──」
「素敵ーっ!! 羨ましいわ!! じゃなくて!! 大事な話があって、えっとね、私の担当地区で妙な事が起こっていて、送られた隊士がみんな、わーってなっちゃって」
「⋯⋯すみません。理解出来ません」
宇那手は、額に手を当てた。
「落ち着いて話してください。何とかしますから」
「あ⋯⋯ごめんね」
甘露寺は涙目になった。泣きたいのは宇那手の方だったが、グッと堪えて言葉を待った。
「あのね、鬼の気配がするの。でもね、幾ら探しても見つからない。なんだか逃げ回っている様な感じなんだけど、そこそこ強そうなのよ。それで、朝になると、隊士が何人か殺されているの」
「⋯⋯女性は殺されていますか?」
「⋯⋯そういえば、一人も殺されていないわ」
「心当たりがあります」
宇那手は、真剣な表情に戻り、姿勢を正した。
「竈門君が、以前上弦の参と接触した話をしましたよね? 私は鬼舞辻に、竈門君の気配を覚えている、上弦の参に後を付けさせる様進言しました。勿論、竈門君には目眩しを施して。恐らくそいつです。女性を喰えない、攻撃出来ないという特徴も一致しています」
「⋯⋯それって、凄く危ない状況じゃない?」
甘露寺は、固まってしまった。
「さ⋯⋯参?! 参がうろうろしているの?!」
「戦う必要は無いです。相手も、戦う気は無いでしょう。私はその鬼と顔見知りですから、竈門君の傷が完治し次第、その鬼を通じて、里の場所を鬼舞辻に流します。甘露寺さんは、しばらく里に出入りせず、その鬼にも近付かないでください」
確かに、宇那手にしかどうする事も出来ない案件だった。甘露寺は、数秒の後、キリッとした表情を宇那手に向けた。