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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第70章 隔てる壁


「火憐さん」

 再び歩き出した宇那手に、槇寿朗は声を掛けた。

「貴女は、自分が女であるから、劣っているとおっしゃったが、それは違う。貴女が女で、それだけの実力、知識を有しているから、他の柱は言い訳をしない。出来ない。限界以上の力を引き出せるのでしょう。貴女が女性だから、人を絶望させる事なく、発破を掛ける事が出来るんです。羨ましいです」

「⋯⋯同時に怖くもある」

 冨岡は、槇寿朗を見据えて本音を囁いた。

「こいつの目論み通りに進むとは思えない」

 彼は宇那手から距離を取り、槇寿朗に向けて呟いた。

「眼前でこいつが殺されれば、確実に士気が低下する。そうでなくとも、殆どの柱が、感情の制御を出来なくなり、動作が乱れるだろう。だから、こいつと程良く距離のある隊士の助力が必須だ。柱なら、数秒で必ず動作を立て直す。その数秒を稼げる隊士が⋯⋯いない」

「俺が傍で、その数秒を稼げれば良いんだが、生憎──」

「槇寿朗様」

 宇那手は、厳しい声で制した。産屋敷の計画は限られた者にしか、知らされていない。

「私は、柱がそこまで間抜けだとは、考えていません。問題ありません。そもそも、私が死ぬ様な状況になれば、どのみち全滅です。お館様も、即座に撤退の指示を出されるはず。冨岡さん」

 彼女は冨岡を振り返って、鋭い眼光で睨み付けた。

「貴方は大丈夫ですよね。私に説教をしたのですから。戦いの場で、悲しむ事も、動揺する事も許しません」

「分かった」

「貴方は、悲鳴嶼さんを除けば、一番の古株です。同い年であっても、実弥さんや、伊黒さんを助けなければいけない。私の事は、死んだ瞬間に忘れてください」

「分かった」

 冨岡は徹底的に無表情に答えた。宇那手は満足気に頷き、彼に飛び付いた。

「でも、生きている間は、忘れないでください」

「⋯⋯お前は猫か」

 冨岡は、突然そんな事を言い、宇那手の髪をわしわしと撫でた。

「どういう意味でしょうか?」

 宇那手は首を傾げた。冨岡は思わず微笑み掛けてしまった。

「思い通りにならない所が、愛おしいと言っているんだ。離れて行くと思ったら、急に擦り寄って来る」
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