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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第65章 If〜煉獄さんが夢主を継子にしていたら〜


 その少女が、天才である事はすぐに分かった。鬼になった実の両親への対応を見ても、そうだ。

 彼女はまだ十五の娘で、縁者もおり、叔母は引き取る意向を示したが、複雑な関係にあった事から、煉獄はその場で自分が連れ帰ると決めた。

 火憐は、僅か二ヶ月で最終選別を突破し、一年後には下弦の十二鬼月を討った。彼女は炎の呼吸を極め、継子として申し分ない存在になっていた。

 煉獄家へ来たばかりの頃は、感情が希薄で、あまり笑わない娘だったが、屋敷に出入りしていた甘露寺との交流もあり、二年後にはすっかり情緒を取り戻していた。

 弟の千寿郎とも仲良くしており、まるで実の姉弟の様だった。酒浸りの槇寿郎の世話も甲斐甲斐しくやいており、関係は良好だった。

 ある事件が起こるまでは。

 火憐が任務から戻ると、縁側で槇寿郎が酒を飲んでいた。

「槇寿郎様。お酒は控えてください。それに、お身体が冷えます」

「お前、まだ居座っていたのか。さっさと出て行け、出来損ない!」

「⋯⋯風邪を引きます」

 精神的に大人だった火憐は、声を荒げる事なく、槇寿郎に歩み寄った。

「師範の帰りをお待ちなのですね」

「待ってねえよ。あいつも出来損ないだ。その内死ぬ!!」

「では、私も共に待ちます」

 火憐は槇寿郎の隣に腰を下ろした。槇寿郎は、久し振りに火憐の姿をまじまじと見た。

 彼女は、以前煉獄家にいた甘露寺と違い、一見普通の娘に見える。日本人らしい黒い瞳に、長く伸ばした黒髪。しかし、歳不相応な落ち着きが、彼女の神秘的な雰囲気を高めていた。

 特別な存在なのだ。

 日の呼吸を使えなくとも、炎の呼吸と、水の呼吸を完全に使いこなしていると聞いた。付け加えれば、杏寿郎も使えない、独自の型を編み出している。

 上背が無くとも、身体が細くとも、強烈な技を使えるのだ。
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