第64章 赤と青
「⋯⋯この人、普段何を食べてるんだろう?」
時透は火憐の手首を掴んで呟いた。
「胡蝶さんより上背はあるけれど、体型は同じくらい。痩せ過ぎ。食べられない⋯⋯のかな」
「そうみたい。お屋敷では、洋食を食べていたみたいだけど──」
「だったら、作らせて。里の人間に命じて。出来るだけ沢山の種類を。この人が、何を食べられるか、僕は知らないから。でないと、死んじゃう」
「分かったわ。私がなんとかしてみる」
甘露寺は決意して立ち上がった。
(今家に帰るのは危険かもしれないけれど、蜂蜜は栄養価が高いわ。宇那手ちゃんを元気にしないと! 嗚呼⋯⋯でも良いのかしら?)
廊下を進みながら、彼女は頭を抱えた。
(冨岡さんに報告するべき? あんなの絶対怒るわよ! でも無一郎君じゃなきゃ、宇那手ちゃんを抑えられないし⋯⋯)
答えが出なかったので、甘露寺は考える事を放棄した。
(まあ、冨岡さんだって、しのぶちゃんの傍にいるんだもの! 問題ないわ!)
問題は大ありだったのだが、彼女は知るよしも無かった。