第61章 立場※
「分かるか? 此処が一番奥だ。此処で感じろ!」
「うっ⋯⋯あぁ⋯⋯ひっ!!」
火憐は、もう訳も分からず喘いでいた。
「義勇⋯⋯さん!」
「なんだ」
「私が⋯⋯馬鹿になったらっ⋯⋯あっ⋯⋯貴方のせいっ!!」
「くっ⋯⋯」
冨岡は火憐の頭を撫でながら、達してしまった。一番奥に精を放ち、慌てて身体を引いた。
「すまない! 流石に⋯⋯」
いくら火憐が、身体の機能を失っているとはいえ、絶対に無いとは言い切れ無かった。その事を胡蝶からも散々言い聞かされていた。
「大丈夫⋯⋯です。薬があります⋯⋯」
火憐は、手を伸ばして冨岡の頬に触れた。
「優しい⋯⋯。やっぱり⋯⋯貴方は優しい⋯⋯」
「不満か?」
冨岡は火憐を抱き起こして訊ねた。彼女は首を横に振った。
「優しいと分かっているから、どれだけ意地悪な言葉も、乱暴な動きも⋯⋯心地良く受け入れられるんです。童磨は⋯⋯ただ恐ろしかった⋯⋯。貴方は違う。義勇さん」
火憐は冨岡の首にしがみ付いた。
「我が儘でごめんなさい。もう一回⋯⋯。今度は、優しくしてください」
「一等甘やかしてやる」
冨岡は火憐を胸に抱え込み、吐息を漏らした。
「何と言うか⋯⋯お前は小動物の様だな。甘えて来るくせに、捕まえようとすると、すぐに腕を擦り抜けて行く。大人の女の様で、子供の様に愛らしくも思える。こうして抱いているだけで、俺は背徳感で頭がおかしくなりそうだ」
「お兄様」
「やめろ」
どんな遊戯だ! と冨岡は頭を抱えたくなった。火憐の希望とはいえ、乱暴に扱った事に対しての罪悪感でいっぱいだったにも関わらず、追い打ちを掛ける様に甘い声で囁かれ、自我を失いそうになった。
「愛している。だから抱くんだ」
冨岡は言い訳の様に囁き、火憐と唇を重ねた。最初は触れるだけの。何度も角度を変えて啄み、蕩然とした表情になった火憐を見て、深く口内を蹂躙した。彼女は抵抗するどころか、冨岡の背に腕を回して、抱き付いた。