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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第52章 怒り


「ですが父上! 薬は⋯⋯」

 輝利哉の言葉に、産屋敷は弱々しく微笑んだ。

「薬なら、既に一月分を貰っている。それに、新しい物が作れたら、彼女はどんな手段を使ってでも、安全に届けてくれるだろう。心配いらない。それに、これ以上宇那手を傷付けたら、きっと私も地獄に堕ちるだろう。あの子の命と健康を犠牲に、生き長らえる事が、許されるはずも無い。義勇、納得してくれるかな。当分の間、あの子を隠そうと思う」

「⋯⋯ありがとうございます。ですが、お館様のお身体を思うと⋯⋯薬よりも、寧ろ⋯⋯。この屋敷に留める事は出来ないでしょうか?」

「それは無理だと、義勇も分かっているはずだ。宇那手は、自由に出入りが出来る。守りが万全な此処よりも、守りが必要な刀鍛冶の里の方が、彼女の動きを制限出来る。里を危険に晒す様な事は、彼女も出来ないはずだ。私の事は心配いらないよ。あの子が繋いでくれた者達が、私の側にいてくれる。しのぶを始めとして、他の柱も足げく通ってくれる様になった」

 産屋敷は、寂しそうに、けれど、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。

「私が死ぬ時、あの子は、決して私の側にいてはいけない。⋯⋯宇那手は、何か治療を必要としているのかな?」

「自分で機能を修復出来たと言っていました。鬼の医者からも薬を貰った様です」

「宇那手は、凄いね。何でも一人で出来てしまう。少しは力にならせて欲しい」

 産屋敷の言葉は、冨岡の本心でもあった。

 産屋敷は、何時の間にか集まっていた鴉達の気配を察知して、顔を向けた。

「話しを聞いていたね? 各々、主人に伝える様に。宇那手の身に起きた事。それから、戦闘以外で上弦の鬼と接触する事は禁ずる、と」

 バサバサと羽音を立てて、鴉達は一斉に主人の元へ飛び立った。
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