第44章 懲罰
それから、洗濯物を抱えて胡蝶の元へ行くと、彼女は満面の笑みで平手打ちをかました。
「お静かに、と言いましたよね? 不死川さんに、声が筒抜けでしたよ?」
「火憐の傷をもう一度手当てしてやってくれ。包帯を外して、傷口を開いた」
「は?」
「あいつは痛めつけられるのが趣味だ」
「ええ?! 絶対に痛め付ける方だと思っていました!! 意外ですね。⋯⋯いや、だからって傷口を開くなんて!! 感染症になったらどうするつもりですか!!」
胡蝶は救急箱を用意しながら、くどくど冨岡に説教を続けた。そして、部屋の惨状を見て冨岡に激怒した。
加えて、屋敷を出ようとした瞬間、不死川が冨岡の顔面を殴った。
「テメェが、説教出来る立場かァ!! 良いか?! アイツは任務を蔑ろにしない!! だがテメェはどうだ?! 今夜一晩をただ浪費して、良いご身分だなァ」
「さっさと薬を届けに行け。俺に構うな」
冨岡が平坦な声で返したので、不死川は反対の頬も殴った。
「ふざけんな、このクソ野郎!!」
「気が済んだか」
冨岡は不死川に冷たい視線を注いだ。
「宇那手が欲しいなら力尽くで奪え。俺は身を引いても良い。あいつに相応しい人間でない事くらい分かっている。だが、宇那手には、意に反して貞操を脅かす者がいれば、迷わず殺せと言ってある」
「あぁ⋯⋯クソがァ!!」
不死川は、地面を蹴り付けた。自分の感情を認めたく無かった。
冨岡は彼と改めて向き合い、少し考えてから口を開いた。
「俺は弱い。確実にあいつよりも先に死ぬ。上弦の鬼を倒す力を得たとしても、二十五歳が寿命なら、やはり、俺の方が先だ。もし、お前の方が、俺よりも長く生きられるのなら、宇那手を支えてくれ」