第7章 君の手〜真田幸村〜
「幸村、今日も紅葉が綺麗だねぇ」
「うるせーうるせーうるせー」
「なんだよ、ただ紅葉が綺麗だって言っただけなのに」
「お前、ふざけんなよ。わかって言ってんの、知ってんだかんな」
「はて、一体何のことだろう」
「どこからだ?どこから見てた?!」
「見てない。見てない。聞こえただけ」
「…ってっめぇ〜」
今日も幸村と佐助くんは男子高校生のようなノリだ。
私は笑いながら眺める。
「幸、そんなに怒らないの。またチューしてあげるから」
「やったな、幸村。おめでとう」
「…お前ら、俺で遊んで楽しんでるな?」
「まあまあ。またお茶でも行こうじゃないか」
「わーい、行く行く!」
私と佐助くんが先に歩くと、幸村は頭をかきながら渋々ついてくる。
私は振り返って、そんな幸村を見た。
そんな風に慣れていない幸村が、やっぱり可愛いと思う。
ついついからかいたくなるこの性分を申し訳なく思いながらも、楽しくて止められないのだ。
きっと、私は好きな子ほどいじめたくなるんだ。
小学生の男子みたいに。
私も、まだまだお子様だ。
私たちは、一歩進んだ。
あのキスはやっぱり大きかった。
きっと、これからまた三人の関係も少しずつ変わっていくのだろう。
そんな気がした。
いつか話せると良いな。
本当は前から気になっていたこと。
あの手に触れてみたかったこと。
今も、触れてみたいってこと。
だって、まだ触ってないもん。
ちょっと、勇気を出してみようかな。
こっそりそう思う。
君の手に…。