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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第82章 駆け引きは恋の始まり・後編〜豊臣秀吉〜




政宗が家康を揶揄い、葉月との真相を聞きたがった時も、俺は何も言えなかった。
その話題が早く終わって欲しくて、ただ黙っていた。
何かを言わないと不自然だとは思ったが、俺は愛想笑いをする気にもなれなかった。
政宗たちの揶揄いを止めるべきなのは、わかっていたのに…。


「ー…そんなに悲しいのか?葉月に男が出来たのが」

俺が一人なった時を待ち構えていたかのように、光秀に声を掛けられ、忌々しくなりながらも答えた。

「違う。心配なだけだ」
「……ふっ。そんなに大事か、あの娘が」
「は?大事に決まっているだろう。信長様が…」
「そうだな。あの信長様が気に入った娘だ。他の男たちが自分のものにしたがっても何ら不思議はない」

俺の言葉を遮って、光秀は言った。
何が言いたいんだ、こいつ。
何かを含んだ言い方が癪に触る。

光秀はふう、と静かに息を吐き、そんな俺を冷静に見つめると腕を組んで俺に向き直った。

「…あの小娘を子ども扱いしていたのは、そうであって欲しいお前の願望からか?」
「なんの話だよ」
「いや?葉月が怒るのも無理ないと思ってな。あいつは小娘だが、子どもではない。お前に怒るのは当然だ…という意味だ」
「…光秀。お前、俺たちのことを見てたのか?」
「残念だが見てはいない。お前たちの声が聞こえただけだ。偶々な。俺が見かけたのは、そんな葉月を追いかけていた家康だ」
「えっ…」
「なんだ。続きが気になるか?教えてやろうか?」
「いや、いい」
「嘘をつけ。知りたいくせに無理をするな」

俺が睨むと、くくっと愉しげに光秀は笑った。
目が爛々と輝き、獲物を半殺しにして弄ぶ猫のようだ。
俺の反応すらも込みで面白がっている。
そして、ふっと真顔になり目を伏せながら「葉月は暫く泣いていた」と言った。

葉月が…泣いていた?
俺の言葉のせいで?
そんなに傷つけていたと知り、胸がどんよりと重くなっていく。

「…家康は影に隠れて様子を見ていた。葉月が泣き止むのを待っていたようだ」
「お前…ずっと見てたのか?そんな二人を」
「悪いが、そこまでしか見ていない。俺も忙しいのでな」

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