第7章 君の手〜真田幸村〜
それから三人でよく会うようになった。
幸と話すのは楽しかった。
ありのままの自分でいられるような、そんな居心地の良さだった。
でも、やっぱり幸は私と話すより佐助くんとの方が楽しそうに見えた。
当たり前なのかもしれないが、私はちょっと傷ついていた。
「佐助くんは、いいなぁ…」
「え?なんで?」
「私も男の子に生まれたかったな…。そしたら、一緒に忍者にもなれたかもしれないし、もっと仲良くなれたかも」
私の話を聞くと、佐助くんはちょっと考えて言った。
「幸村と?」
「…うん。だって、私に対してだと露骨に苦手そうな顔するんだもん」
「うーん…そう見えちゃうよね」
「でも、何か幸って良いよね。あの、女の子慣れしてない感じが。ちょっと不器用で、口悪くて、男の子って感じが」
「まあね。アイツは良いやつだよ」
「うん、わかる。佐助くんに良い友達が出来て良かったなって思うもん」
「君も、良い友達だよ。俺にとっては」
「…佐助くん。私もだよ。ありがとう」
私たちは微笑み合った。
佐助くんの存在に私は何度も助けられた。
それなのに、佐助くんにヤキモチ焼いたって仕方ないのに。
二人で感謝し合っていると、後ろから幸村の声がした。
「なんか、俺…邪魔じゃね?」
ちょっと不貞腐れてるように感じ、私は笑った。
「別にそんなことないよ。幸の佐助くん、取ったりしないから」
「…なんだそれ。俺を何だと思ってんだよ」
「まあまあ、三人で茶でもしに行こう」
いつも通り、私がからかうと幸がムッとして、私が笑う。
そんな私たちの間に入って、佐助くんが茶屋まで誘導してくれた。
私たちの関係は、中学生のようだ。
いつまでも楽しくて、でも不安定で。
このままで居たいような、もっと違う関係もあるかと少し期待してしまうような。
アンバランスな関係…そんな気がした。
ある日、いつもの待ち合わせ場所に行くと、気まずそうに幸村が立っていた。
「あれ…?幸、佐助くんは?」
「あぁ、今日は用があって来れないって」
私は佐助くんが私に気を利かせて二人にしてくれたのではとピンと来た。
ありがとう、佐助くん。
でも…めっちゃ困ってるよ、幸。
仲良くなれるチャンス、生かせるかなぁ?
自信ない、かも。