第79章 満月には、ありのままの気持ちを…〜明智光秀〜
「もう一度だ。葉月から口づけされるとは思わなかった。手紙といい、お前は俺を驚かせるのが上手いな」
「私だって驚いてます。こんなこと…するつもりじゃ…」
「そうか?俺はそんなことしかするつもりはない」
そう言って、私の顎を長い指先で掴んだ。
私が光秀さんと名前を呼ぼうと口を開いた時、また柔らかく唇に言葉を封じられた。
時々漏れる吐息が艶かしくて、月にすら見られているのが恥ずかしかった。
「光秀さん…好き…。大好き…」
思わず自分から抱きしめて、そう告げてしまえるほどに私の気持ちは丸裸にされてしまった。
「ー…あぁ。よく出来たな。ご褒美だ」
もう、貰っていますよ。
今日は、月を見ながら晩酌するんじゃなかったんですか?
私はその日、飲み込まれた月のように光秀さんの手の中に沈められていった。
そう、満月の不思議な力に導かれて…。