第6章 妹以上恋人未満〜豊臣秀吉〜
次の日、朝餉の時間になっても葉月が来ない。
「おい…あやつは?」
「はっ少々体調が良くないようなので、自室で休んでおります。」
信長の質問に、秀吉が答える。
「ほう。抱き潰したか、猿め」
「…っ!」
信長は口の端だけ上げ、秀吉を見た。
秀吉は、みるみる赤面していく。
その途端、
ピューと政宗が口笛を吹き、
「ふっ」と光秀は笑い、
家康は横を向いて小さく溜息をついた。
三成だけが
「秀吉様、思いが通じ合ったのですね!」
と喜びの声を上げた。
「やっとくっついたか」
光秀が口を開くと、秀吉が睨む。
「お前、俺の気持ちを知ってて、わざと俺の前であいつに手を出してたな?」
「なんのことだ。実際に手を出したのはお前だろう」
「…っお前、あんな跡つけやがって何言って」
「何のことだ」
「しらばっくれやがって」
「待て」
二人の話を信長が手で止めた。
「あれは、俺がしたことだ」
「信長様が?!」
「あいつめ、俺のおかげだということを忘れているな」
そう言って、信長は昨日のことを思い出しながら笑う。
「失礼ですが信長様、ご戯れが過ぎるかと…」
「ふん、元々アレは俺の所有物だ」
「…それを忘れるなよ、秀吉」
信長は、跪く秀吉を蔑むように見つめ、冷たく言い放つ。
「はっ…」
秀吉は深々と頭を下げた。
お、恐ろしい…
その場にいた男たちは全員、心の中でそう思った。
未だ夢の中にいる姫だけが、やっと妹から抜け出した喜びの笑みを洩らすのであった…。