第6章 妹以上恋人未満〜豊臣秀吉〜
「はぁ…」
思わずため息が漏れる。
「なんだ、随分と深いため息だな」
信長様がこちらを見て言う。
天守閣で久しぶりに囲碁の相手をしていたのだ。
「私、そんなに子どもっぽいでしょうか…」
「なんだ、秀吉のことか」
「なっ!なんでわかったんですか?!」
「馬鹿者。お前の気持ちなど、この安土城で知らぬものはおらん。秀吉を除いてな」
「…」
「妹に見られるのがそんなに不満か?」
「はい…そうなんです」
「お前から気持ちを伝えれば良いだろう」
「そ、それが出来たら悩んでいません」
私を妹として可愛がってくれているから、言えないんじゃないか。
それ以上の関係になりたい、だなんて。
「ふっ、そうか…ならばな」
信長様は私を手招きすると
「………と言え」
「そんなこと!絶対言えません」
私は恐ろしくなり、首を振る。
「何を言う。言えないのではない、言うんだ」
「そんなぁ…」
信長様の命令はいつも絶対の雰囲気だ。
断れそうになかった。
「あとはな…」
信長様は私の首筋に唇を合わせ、強めに吸った。
「なっ!」
「この跡を聞かれたら、光秀にされた…と言え」
顔が赤くなっていくのがわかる。
首筋の赤い跡を手で隠し、信長様を睨んだ。
「良い顔だ。そのまま、秀吉の部屋に行ってこい」
「…今、ですか?」
「そうだ。もし、上手くいかなかった時は慰めてやる」
と言って笑って私を見送る。
…信長様、楽しんでいますね?
もう、どうなっても知らないから!
私はやけになって、天守閣を出た。
秀吉さんの部屋を目指して。