第5章 素直になれなくて〜伊達政宗〜
政宗のお粥が口いっぱいに広がり、鼻の奥がツンとした。
思わず涙目になる。
「政宗、す…」
「す?」
「…すっごく美味しい」
そう言って、お粥を帆奪った。
…危なかった。
政宗のお粥の美味しさとこのシチュエーションに溺れて、うっかり告白する所だった。
政宗はまっすぐ私を見て、私の様子を伺っている。
私は、だんだん意識がはっきりしてきて、胸が苦しくなってきた。
お粥を食べさせて貰ってるなんて…私、何やってるんだろう。
「もう、大丈夫。自分で食べるから。ごめんね」
「…お前、そういうのは可愛くない」
私はびっくりして、政宗をまじまじと見た。
「こういう時は素直に甘えればいいだろ?」
そう言って、またお粥を冷まして私に食べさせようとする。
「ほら、食べさせてやるから」
胸が…また苦しい。
「…うん、ありがとう」
「そうこなくっちゃ、な」
政宗は、やっと満足そうに微笑む。
困ったな…私、今、政宗と離れがたい。
結局、全部食べさせて貰った。
私がまた横になろうとすると、政宗が立ち上がろうとする。
あ、帰ってしまう。
そう思ったら、つい手が伸びていた。
「…どうした?」
思わず、政宗の着物の裾を掴んでいた。
「もう少し、いてやろうか?」
すごく優しい声で言われ、ドキドキした。
「うん…ごめん。もうちょっとだけ」
つい、本音が出てしまった。
ふっと政宗は優しく笑い、私の頭を撫でた。
「あぁ、わかった」
また、私の横に腰を下ろしてくれた。
呼び止めたものの、恥ずかしくて話せない。
でも、政宗はそんなことお構いなしに私の手を握った。
「寝てろよ。手、繋いでてやるから。これなら寂しくないだろ?」
また、そんなことをさらりと言って笑った。
政宗の手は、少し冷たかった。
私は横を向き、政宗の手を両手で握って目を閉じた。
とても安心する…。
私はやっと眠りにつけた。
目を覚ました時、頭痛はもうしなかった。
頭痛がないというのは、こんなに素晴らしいことだとは!
私は思わずガッツポーズをした。
すると、横からくくく…と笑う声。
その笑い声の主は布団の横に寝転がり、私の方を見ていた。
「え!政宗!まだいたの?」
政宗がまだいたとは思わず、びっくりして声を上げた。
「あぁ。まあな。どれ…」
頭を抑えられ、またおでこをくっつけられた。
「ん!だいぶ良さそうだな」
くっつけたままで言う。