第59章 赤い跡をつけて〜明智光秀〜
私がバタバタと動き回っていると、目の前に人が立ちはだかっていた。
「よぉ、精が出るな」
「…わっ!政宗か。びっくりした。どうしたの?」
「どうしたのはこっちの台詞だ。あからさまに避けやがって」
「……やっぱり気づいた?」
「当たり前だろ。お前、もっと器用に動けねーのかよ」
「だって…」
「ま、仕方ねーか。秀吉が寂しがってるぜ?世話焼き足りねーんだな、あれは」
「……そう。秀吉さんらしい」
「三成も。多分、家康もだな」
「へえ。意外」
「意外か?まあ、あいつは素直じゃないからなぁ」
「それを伝えに?」
「まあな。あと、もう一つ、とっておきのお土産話があるぜ?」
「え!何?」
……………
「秀吉さん、葉月ちょっと変じゃないですか?」
「家康もそう思うか?なんかおかしいよな」
「…そうでしょうか?いつも通り可愛らしいですよ?葉月様」
「顔じゃないよ、行動。黙ってて、三成は」
「確かに可愛いよな、葉月は。わかりやすくて」
「…?なんの話だ、政宗?」
「何か知ってるんですか、政宗さん。意味深な言い方ですね」
「いやいや。なんも」
また武将たちは葉月の噂話をしていた。
最近の葉月は正に心ここに在らず。
ぼんやりとしたり、急に赤くなったりしている。
政宗だけは温かい目で葉月を見ていた。
…あの日の葉月の反応は可笑しかった。
一人思い出し、政宗はくくっと笑った。
ー…「光秀の本命、誰かわかったぜ?」
「え?政宗、知ってるって…」
「あぁ。あれな。違った。もう本人に確認済みだ」
「??…え?じゃあ政宗が見た人って…」
「秀吉のコレだ」と、政宗が小指を立てた。
「え!秀吉さんと三角関係?!」
「ちげーよ、秀吉が贔屓にしている遊女だよ」
「……光秀さんの本命は別の人だったの?」
「そ。噂話なんて当てにならねーな」
「政宗が言ったんじゃない」
「待て待て。そもそも、噂話になったのは、葉月、お前が来てからだ」
「…私?」
「お前、前にどっかの大名に会いに光秀と同行したろ?ばっちり粧し込んで」
「うん。一応…姫様の体で行ったから…」
「綺麗だったもんな。お前、化粧映えするし、いつも化粧しないから余計に」
「……??それがどうしたの?」
「わからねぇ?お前だよ、噂のオンナは」
「はっ?!」