第56章 先生と私(現パロ)〜武田信玄〜
「うーん、うーーーん」
私は一日中、携帯を握りしめながら唸っていた。
相手の心を掴む文章の送り方ってあるのだろうか?
散々考え、迷った挙句…
先生は、私からどんな文が送られて来ても何も思わないだろうという結論に至った。
…気付くのが遅いよね。
でも、ちょっとでも好きになって貰えるならなって欲しいのだ。
私は消して打って消して打って…先生に送信した。
結局、シンプルな文章になってしまった。
『武田信玄先生へ
葉月です。連絡が遅くなってすみません。
いつなら逢えそうですか?」
すると、意外にもすぐ返信が来た。
「葉月、待ちくたびれたよ。
次の土曜日で良いかな?場所はまた連絡するよ
武田信玄」
…待ちくたびれた。
待ちくたびれた?!
私の連絡を待っていてくれたのだろうか?!
まさか。
いや、でも…もしかしたら。
こんな一文に惑わされて、私は夜よく眠れなかった。
✳︎
場所は、横浜だった。
先生が横浜の方に住んでいるのは知っていたけれど、本当に横浜で逢えるなんて。
先生の地元で…。
私は横浜なんて、横浜中華街か水族館でしか来たことがない。
大人な街だ…私にとっては。
先生は、何も考えていないのだろうけれど。
私は精一杯のお洒落をして出掛けた。
ピンクのネイルに、髪はゆるく巻いて。
肩の所が開いている肌見せの服に…ふんわりしたスカート。
いつもジーパンの私は、初めて先生の前で足を出した。
気づいてくれるだろうか?
…気づいてくれなくても良いの。
少しでも可愛いなって思って貰いたいだけなの。
好きなの、先生が。
こんな風に必死になってしまうくらいに。
心臓が張り裂けそうなくらいに…。
もうすぐ、先生と待ち合わせの時間。
14時。
横浜駅の改札口で…。