第50章 抱きしめて欲しくて〜豊臣秀吉〜
「…だよな。わかってはいたんだけど」
「珍しいな、お前がそんなことすんの。そんな添い寝だけでよく我慢できんな」
「お前…どこまで知ってんだよ」
「はっ。当たりかよ。やべーな、お前」
「……っ、この野郎。カマかけたな」
「随分と純愛なこって」
「…そんなんじゃねーよ。あいつがそれを望んでいるとは思ってないだけだ」
「男女の関係になることを、か?」
「ああ。まあ、そうだな。あいつの寂しさにつけ込みたくはないしな」
「やっさしー」
「…お前、怒るぞ。そろそろ」
堪えきれずくくくと政宗が笑い、むっとする秀吉を見ながらふっと急に真剣な顔をして言う。
「葉月に直接聞けよ。まあ、俺は待ってるようにしか見えねーけどな」
「…何をだよ」
「最後まで手を出してないから罪じゃねえってことはないだろ。
お前のやり方は、葉月を悩ませてるだけだ。
自覚しろよ、優しいお兄ちゃん」
政宗が挑発的に言うと、秀吉はぐっと拳を握りしめて何かを言うのを迷うように黙り込み、「そうだな」と呟いた。
政宗はちょっと笑うと「ま、頑張れよ」と肩を叩いて去って行った。
「いらねーなら、俺が貰ってくぜ?」と手を振りながら。
「んなもん、やれるかよ…」
秀吉はまるで自分に言い聞かせてるように、政宗の背中に向かって呟いた。