第49章 気づいてよ〜蘭丸〜

…最近、蘭丸くんに元気がないな。
私と目が合っても笑っているのに、いつもと違う。
あのキラキラが三割減って感じで…。
なんだか切なげに見えてしまう。

どうしたのかな？


「おい、葉月」


…何かあったのかな？


「おーい、葉月っ！」
「え！？あ、ごめん。慶次か」

目の前で大きな手を振られ、やっと我に帰ると呆れた顔の慶次が私を見下ろしていた。


「どんだけぼんやりしてんだよ」
「そんなにしてた？」
「してただろ。なんか考え事か？」
「…ねえ、蘭丸くん元気なくない？」
「は？どこが」


そう言って、いつものように女の子たちに囲まれている蘭丸くんを見ると「いつも通りだろ」と指差して言う。


「え、全然だよ。もっとぱぁ〜って明るくて眩しいくらいの蘭丸くんが、その光が半減しているというかなんと言うか…」
「そーか？」
「わかんない？」
「わかんねぇな」
「…頼りになんないな、慶次は」
「この野郎…」


肩をすくませる私に、慶次は口の端をピクピクさせて私を見下ろした。
私と慶次の会話はいつもこんな感じなのだ。


「それよか、信長様が呼んでるぜ？」
「え…、やだなぁ。私、何かしたかな」
「まあ頑張って来いよ」
「…はい」
「なあ、さっきの話だけどさ。蘭丸になんか余計なこと言ったんじゃねーのか？」
「え、私が？」
「そ、お前が」
「なんで私って決めつけるの？」
「だってそりゃあ…」
「…何？」


私が首を捻ると、気まずそうに目を逸らす慶次。
不思議に思い慶次に詰め寄った。


「え？何よ」
「なっなんでもねーよ。じゃあな」
「あ、逃げた…っ」


慶次はそれだけ残して消えていった。
…逃げ足の速い奴め。


「…本当にどうしたのかな？」

私はまた遠目に女の子たちと話している蘭丸くんを見ると、小さく息を吐いてその場から離れた。



…哀しげに此方を見ていた蘭丸くんには気づかずに。