第29章 可愛い男の子〜蘭丸〜
「…ごめんね」
蘭丸くんの手が私の着物を脱がそうとした時、私は謝った。
「なんで、謝るの?」
キョトンとした顔で言われ、力が抜ける。
「蘭丸くん、私が可愛い可愛いって言い過ぎたのが嫌だったのかなぁって思って」
「あぁ。…違うよ。俺、可愛いって言われるの慣れてるし、嫌いな言葉じゃないから」
「え?じゃあ、なんで…」
私が聞くと、蘭丸くんは思い出したように膨れる。
「だってさ、さっき葉月様、かっこいいって言ってたでしょ…家康様のこと。俺には可愛いしか言わないのに。すっげーむかついた」
「あ、ごめん…」
「だからね、かっこいい所も見せなくなっちゃった」
…なっちゃったって。
こらこら。
「もうかっこいい所見せて貰ったよ。男性なんだなぁってびっくりしたし。だから、ね。もうやめよう」
「それは…やだ」
「なんで?!」
「だってー。俺、もう止まらないと思う」
そう言いながら、再び私の着物に手を伸ばす。
「ごめんね」
蘭丸くんは、ちょっと笑って舌を出す。
わ、悪い子だ〜!
可愛い顔して、それはずるいよ。
「だって、好きな子とこんなことしてたら、途中でやめれないんだよ…俺だって」
私の耳元でそう囁かれ、私は赤くなっていく。
蘭丸くんって
蘭丸くんって…
めっちゃ女の子のツボを押さえてるな。
私はもう何も言えなかった。