第3章 番外編〜2017/12/24〜
「素晴らしい、本当に素晴らしいよ。まさに世界を変える力だ。里香さえあれば、せこせこ呪いを集める必要もない。次だ次こそ手に入れる!!」
壁にもたれかかり、ずるずると座り込むと、いつの間にか駆け寄って来たのは予想外の人物だった。
「いいのかい?私を助けたりして。」
失くなった右腕に包帯を巻く彼女に問いかける。
「怪我人は大人しく手当てされてればいいの。」
少しキツイ口調とは裏腹に、触れる手はとても優しかった。
「私の唯一の心残りは、君の花嫁姿が見られなかったことかな。全く、君らがもたもたしてるから。式のスピーチだって考えてたんだよ?」
もっと他に言うことがあるでしょ。
そう叱るよりも先に、あまりの彼らしさに呆れてしまう。
「何で呼ばれる前提なのよ。ていうか、呪術師ばかりの会場に足を踏み入れようとするその度胸がすごいよ。そんな冗談言えるくらいだから、思ったより体は大丈夫そうね」
「・・ハハッ・・・信じてもらえないかもしれないけど、君の晴れ姿を見たかったのは本当だよ....例え、隣にいるのが私でないとしても」
あぁ、滲むな涙。
溢れるな涙。
見せるな涙。
堪えようとすればするほど、それに反してどんどん視界がぼやけてくる。
「っっっ・・・ほ、ほうたぃ、足りなかったから、取ってくる・・・大人しくしててね」
くるりと背を向け、震える声を必死に抑えて言い切った。
「・・・せに」
彼の言葉は聞き取ることができなかった。でもそれで良かったのかもしれない。
1年生の所に行かないと。
私は逃げるようにその場を立ち去った。
もちろん、その時既に死角に立っていた悟が、その後傑とどんなやりとりをしたのかも知らない。