第3章 番外編〜2017/12/24〜
「おつかれさま」
「硝子こそ、お疲れ様。大変だったね。クマ、いつも以上にひどいよ?」
「・・・冗談言えてて安心したよ。私、ベランダで一服してくるからさ。そこらへん座っててよ。一服終わったら、一杯やろ?部屋の鍵閉めてるから、邪魔入らないし。」
そう言って、ガラガラと開いたベランダからは、一瞬冬の冷たい風が吹き込んでくる。
窓の外で寒空の下、煙を吸っては吐く硝子を横目に、私はこれ以上堪えることができず声を上げながら泣きじゃくった。
あの時もっとああしていれば、こうしていれば。
考えても仕方のないことを、思わずにはいられなかった。
どれくらい時間が経っただろうか。私が落ち着くまで待ってくれたようなタイミングで、長い一服を終えた硝子が外から戻ってきた。私の目は真っ赤に腫れていたはずなのに、硝子はそこについては何も触れずに、
さっむ
と独り言を言いながら、どこからともなく一升瓶を取り出してきた。
それから一体何本空けただろうか、
目の前の彼女が机に突っ伏してからしばらくは経っている。
そろそろ入れてやるかと部屋の鍵を開け、迎えを招き入れる。
「いや、もっと早く開けろよ。コイツ潰れたのだいぶ前だったでしょ」
そこに立っているのは言うまでもなく、五条だ。
「なんとなく、しばらくアンタを廊下に立たせたくなったの」
「コッワ。こんな真冬に、鬼かよ」
「それで?アイツの体は?」
「・・・あぁ、僕が処理した。硝子は何もしなくていいよ」
「ふ〜ん。ま、いいけど。それより早く、連れて帰ってあげて。風邪ひくから」
深い眠りに落ちた姫を抱き抱える。
「・・・硝子、ありがと。助かったよ」
帰り際、そう言い残し五条は暗い廊下へと消えていく。
ギシッ
彼女をベッドへ寝かせ、布団をかける。
「どうせ、明日には何事もなかったみたいに笑うんだろ?頼むから、僕の知らないとこで泣くなよ」
閉じていてもわかる、まっかに泣き腫らしたその目をそっと撫で、五条も自室へと戻って行った。
Fin.